『AK70 MKII』meets 小林祐介(THE NOVEMBERS)

──普段はどんな環境で音楽を聴かれることが多いですか?

音楽と真剣に向き合いたいときはオーディオシステムでスピーカーを鳴らして聴きます。楽曲の構成やアンサンブル、定位感を確認するような際にはヘッドホンを使っています。そうでないときはかなりイージーに聴いてますね。iPhoneと純正イヤホンで聴くことも多いです。その組み合わせで聴くリスナーの方が多いので、自分たちの音楽がどう鳴っているのかを考えるきっかけにもなるんです。いいミックスというのはスタジオのスピーカーで確認した音のデザインが、純正イヤホンでもイメージが損なわれない、崩れない。そうした判断材料のひとつとして、iPhoneと純正イヤホンで聴いています。

──今回は『AK70』の後継モデルで、新旧フラッグシップの技術と魅力を注いだエントリーを超えたプレミアムモデル『AK70 MKII』で聴いていただきましたが、いかがでしたか?

こうしたポータブルプレイヤーを使っていなかったんですが、当たり前ですが音がいいですね(笑)。外出したときにいい音で聴く感覚を忘れていましたが、その感覚を思い出しました。音楽は自宅で腰を据えて聴くものだと思い込んでいて、外で高音質で聴くということをあまり重要視してきませんでしたが、やっぱりどこでもいい音で聴けたらいいですよね。

──ご自身の『Before Today』を『AK70 MKII』で聴いた印象は?

音の鳴り、響きが豊かになって自然な感じで聴けましたね。200hz~300hzあたりのローミッドより少し下の押し出し感や肉厚感がしっかりと出ていたのが印象的でした。聴いているのが楽しくなって、自然と音量を上げていましたね。高域の分離感や音の輪郭を強調するプレイヤーやイヤホンがありますが、そうではない。音に脚色がなくて、パッケージされた音を極力そのまま伝えるという意思みたいなものを感じました。大音量で聴くのが好きなのですが、音量を上げた時に耳が疲れてしまうことがたまにあります。でも、『AK70 MKII』は大丈夫でした。大きくてやかましいのではなく、音楽そのものの迫力を増幅してくれる。音量を上げても大丈夫なのは鳴りに余裕があるからなんでしょうね。

──ほかの作品もお聴きになったそうですが、同じように感じられましたか?

印象は変わらないですね。クラシックのハイレゾ音源はすごく相性がいいなと感じました。音楽を聴いた時の何かしらの感動や、無意識のうちにいつもとは違う受け止め方をするという体験ができたと思います。それが顕著だったのが女性ヴォーカルの音楽とクラシック。アンサンブル的にデザインが行き届いたものが、とにかく全然違いましたね。レコーディング現場はハイレゾで聴いているようなものですが、何をもって良い音とするのかということは土屋昌巳さんにプロデュースしてもらってから考え方が変わってきました。世間一般がいいとする音に対して、もういちど価値基準を疑って、自分にとって良い音、心地よい音、正解の音をその都度、選び直さないといけないということを学んだんです。音の波形や数値だけで判断するのではなく、言語で説明できないような心地よさがあるのがいい音だと思うようになりました。そのためにはあらゆるベストを尽くす。土屋さんはそう教えてくれました。

──『AK70 MKII』はまさにミュージシャンが考えるいい音をそのまま届けることを思想として設計されています。

BORISのTakeshiさんが「自分たちの音楽は大音量で聴いたときにいちばん美しくなるように音楽をデザインしている。それにも関わらず、大音量にしたことによって醜くなってしまう環境で聴いている人がほとんどなので、すごくジレンマがある」と話してくれたことがありました。まさにその通りで、迫力ある音だと錯覚されるけど、ただ音量が大きいだけというケースが多いと思うんですよ。よくない音の音量を上げるとつぶれてしまいますし、意図する音が届いていないのはやはり残念ですね。『AK70 MKII』のように手軽かつ高音質なプレイヤーがあるというのは作り手として頼もしいですし、安心させられます。

インタヴュー・文/油納将志 写真/ナオミサーカス

(アーティストプロフィール)
2005年に結成。2007年にUK PROJECTより1st EP「THE NOVEMBERS」でデビューを果たす。2013年10月、自主レーベル「MERZ」を設立。海外ミュージシャン来日公演へのサポート出演も多く、テレヴィジョン、ワイルド・ナッシングらとも共演。2015年10月にはBlankey Jet CityやGLAYらのプロデュースを手がけた土屋昌巳を迎えた5th EP「Elegance」をリリースした。その後2016年9月に6枚目のアルバム『Hallelujah』を、MAGNIPH/HOSTESSからの日本人第1弾作品としてリリース。2017年9月には初のベスト・アルバム『Before Today』も同レーベルからリリースした。小林祐介はソロ・プロジェクトのPale im Pelzや 、CHARAやyukihiro(L‘Arc~en~Ciel)、Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO's bloodでも活動している。

http://the-novembers.com/

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